音楽アニメ映画『犬王』のレビュー・感想・おすすめな人

音楽アニメ映画『犬王』のレビュー・感想・おすすめな人

この記事では、アニメ映画『犬王』を鑑賞した感想を書いています。

ネタバレを含んでいるので、「具体的な内容はまだ知りたくない」という場合は、あらすじまで読んで戻るボタンを。

『犬王』を観た個人ブログの映画レビューを読んでみたい場合は、先に進んで読んでみてくださいね。

 

アニメ映画『犬王』の基本情報

作品名『犬王』
映画監督湯浅政明
脚本野木亜紀子
原作『平家物語 犬王の巻』
著者古川日出男
出版社河出書房新社
キャラクター原案松本大洋
音楽大友良英
撮影関谷能弘
配給アニプレックス、アスミック・エース
制作会社サイエンスSARU
製作国日本
タイプ邦画
上映時間97分
公開日(日本)2022/5/28

 

アニメ映画『犬王』の登場人物・キャスト

登場人物声優
犬王(いぬおう)アヴちゃん(女王蜂)
友魚(ともな)森山未來
足利義満(あしかが よしみつ)柄本佑
犬王の父津田健次郎
友魚の父松重豊
谷一後藤幸浩
覚一(かくいち)本多力
定一山本健翔
藤若(ふじわか)吉成翔太郎
業子(なりこ)松岡美里
平家の亡霊大友良英
古い面片山九郎右衛門・谷本健吾・坂口貴信・川口晃平

 

アニメ映画『犬王』のあらすじ

室町時代初期の京の都に生まれた異形の子、犬王は周囲から疎まれ、顔を瓢箪の面で隠されて育つ。

独自の舞や唄で才能を開花させた彼は、盲目の琵琶法師の少年・友魚と出会い、運命が一変する。

二人は歌と舞で互いの才能を高め合い、独特のエンターテイナーとして人々を魅了する。

 

犬王は舞を、友魚は琵琶の弦を弾き、二人だけの世界を展開する。

彼らの芸術は、乱世を生き抜くための絆を築き、暗い時代を照らす光となる。

しかし、背後には深い呪いの真相が潜み、二人の運命は予測不可能な展開を迎える。

琵琶の旋律に導かれ、自らの道を進む犬王と、異界と共振する友魚の物語は、壮絶な運命に立ち向かう姿を描く。

 

アニメ映画『犬王』の予告編動画

 

アニメ映画『犬王』の感想

『犬王』は、湯浅政明監督の手により、過去と現在が織りなす、時代を超えた物語が描かれたアニメーション映画です。

異形の子「犬王」と盲目の琵琶法師「友魚」の友情と成長を軸に、室町時代の日本を舞台にしたロックンロールなストーリーが展開されます。

この作品の最大の魅力は、歴史の隙間を埋めるような創造性と、それを支える圧倒的な音楽と映像表現にあります。

 

映画は、犬王と友魚が出会い、共に成長していく過程を描いています。

犬王の異形の姿と友魚の失明という身体的な特徴が、彼らの内面を映し出しているかのようです。

特に心に残ったのは、犬王が能楽の舞を通じて自身の呪いを解き放ち、徐々に「普通」の姿に戻っていくシーンです。

これは、彼らが社会の枠組みから逃れ、自由を手に入れる過程を象徴しているように思えました。

 

しかし、この映画には残念な点もあります。

物語の進行において、登場人物たちの深い心情や葛藤が十分に描かれていない部分があります。

例えば、犬王が最終的に権力に屈する過程や、友魚が犬王との関係をどう捉えているのかなど、もっと掘り下げられていれば、彼らの内面と行動の背景がより明確になり、観る者に深い共感を呼び起こすことができたでしょう。

 

この映画が特筆すべきは、その革新的な表現方法です。

室町時代という古い時代を舞台にしながら、モダンなロックミュージックを取り入れた点は斬新で、この時代のエンターテインメントに対する新たな解釈を提供しています。

ライブシーンの熱狂は、まるで現代のコンサートを見ているかのような感覚に陥らせ、過去と現在の境界を曖昧にします。

それは、音楽という普遍的な表現手段が、時代を超えて人々をつなぐ力を持っていることを示唆しています。

 

また、犬王が身につける異形の面が、彼の身体から取り外される様子は、彼の内面の解放と成長を象徴しているように思えました。

この映画は、見た目や身体的な特徴による偏見や固定観念に立ち向かう人々の物語であり、多様性と受容の重要性を説いています。

 

一方で、映画は時折、視覚的な美しさや音楽に依存し過ぎて、物語の深堀りやキャラクターの心情描写が後回しになっている印象を受けます。

特に、ラストシーンの犬王と友魚の再会は感動的ですが、もっと彼らの内面や過去の経緯に焦点を当てた描写があれば、より感動的なシーンになったかもしれません。

 

まとめると、『犬王』は、その斬新なアプローチと室町時代の日本を舞台にした大胆なストーリーテリングで、観る者を惹きつけます。

音楽と映像のシンクロが見事で、特にアヴちゃんの歌声はこの映画の魅力を一層高めています。

歴史を新たな角度から描き出すこの作品は、アニメーション映画の新たな可能性を示していると言えるでしょう。

 

アニメ映画『犬王』はこんな人におすすめ

アニメ映画『犬王』は、音楽と歴史の融合に魅力を感じる人にとって、まさに必見の作品です。

特に、日本の古典文学や歴史に興味があるが、従来の表現方法に新たな息吹を求めている人には、この映画の革新的なアプローチから新鮮な刺激を受けるでしょう。

また、室町時代という過去の日本を舞台にしつつ、現代的なロックミュージックを取り入れる手法は、音楽ファンにとっても極めて興味深い体験となります。

 

この映画は、音楽と映像の融合に優れ、アートやアニメーションに深い関心を持つ視聴者にとっても魅力的です。

特に、映像表現に敏感な人は、湯浅政明監督の独特なスタイルと松本大洋のキャラクター原案によるビジュアルの鮮やかさに魅了されることでしょう。

さらに、ライブパフォーマンスやコンサートに魅力を感じる人にとっても、この映画のライブシーンは圧倒的な臨場感と迫力を感じさせてくれます。

 

一方で、物語の深みやキャラクターの心理描写を重視する視聴者にとっても、犬王と友魚の複雑な関係や彼らの内面の葛藤は深い共感を呼ぶはずです。

彼らの友情と成長の物語は、時代を超えた普遍的なテーマを提示し、多くの視聴者にとって共鳴する部分が多いでしょう。

 

【まとめ】音楽が好きならアニメ映画『犬王』を観るのがおすすめ

音楽の力を信じ、その豊かな表現に魅了される人にとって、アニメ映画『犬王』は間違いなくおすすめの一作です。

この映画は、ただの歴史劇ではありません。

室町時代の日本を舞台にした物語は、ロックミュージックという現代の感覚を巧みに取り入れ、歴史の枠を超えた独特の体験を与えてくれます。

異形の能楽師・犬王と盲目の琵琶法師・友魚の絆を軸に、彼らのパフォーマンスが時代を超えて人々を熱狂させる様子は、音楽の持つ普遍的な力を見事に描き出しています。

 

映画のハイライトであるライブシーンは、視覚的にも聴覚的にも圧巻の演出で、まるで実際のコンサートにいるかのような臨場感を覚えます。

アヴちゃん(女王蜂)の力強い歌声と、映像と音楽の完璧なシンクロは、映画を一層引き立てています。

また、キャラクターたちの心情を音楽を通して表現する手法は、観る者の感情を直接的に揺さぶります。

 

音楽ファンならば、古典的な物語に現代のロックミュージックがどのように融合しているかを楽しむことができるでしょう。

また、アニメーションやアートに興味がある人にとっても、本作の革新的な映像表現は新しい発見をもたらします。

この映画は、歴史や音楽への深い理解は必要なく、単に映像と音楽の力強い融合を楽しむことができます。

 

まとめると、アニメ映画『犬王』は、音楽の持つ力、特にロックミュージックに魅力を感じる人にとって、新しい体験を与えてくれる作品です。

この映画は、歴史的な背景を舞台にしつつ、音楽と映像の力で新たな物語を紡ぎ出しています。

音楽が好きならば、『犬王』は観る価値のある映画と言えるでしょう。

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